こんにちは。ハーブガーデンショップ店長の服部紗希です。

「チャイ」と言っても、いろいろありますよね。

たとえば、イランのチャイ。トルコのチャイ、ロシアのチャイもあります。
どれもスパイスやミルクは入っていなくて、ストレートでいただく紅茶です。
これらも立派な「チャイ」であり、文化に根ざしたお茶です。

一方で、日本で「チャイ」と言ったとき、多くの人が思い浮かべるのは、
インド式のアッサムCTCとミルクを使った甘いお茶=「チャイ」かもしれません。

だからこそ、名前を丁寧に使い分けること、そしてその背景や違いを知ることって大切だなと感じています。

私が好きな「チャイ」は、スパイス入りの「マサラチャイ」。
でも、それがすべてではないし、他のチャイもそれぞれ美しい文化を背負っています。

紅茶って、ほんとうに奥深いですね。

私は紅茶が好きです。ハーブティーよりも先に好きだったのは紅茶です。
ストレートでも、レモンティーでも、アールグレイでも。アップルティーもです。

特にアップルティーは250万人乙女のバイブルと言われた「星の瞳のシルエット」でフォションのアップルティーが出てきてから特に好きになりました。中学・高校時代はアップルティーがあれば必ず飲んでいました(‘-‘*)


ティーバッグでも茶葉でも、その日の気分で砂糖を入れたり、入れなかったりしながら、紅茶と過ごす時間はずっと私の日常の一部でした。

けれど「ミルクティー」は、昔からどうしても苦手でした。乳製品が苦手なのです。
牛乳の風味や後味が身体に合わなくて、砂糖を入れても、冷たくしても、やっぱり受け付けられない。
チーズも、焦げてとろけた状態なら少し食べられるけれど、たとえばフィレオフィッシュはチーズ抜きで頼むほど。
それくらい、乳製品に対しては敏感な感覚を持っています。

だから「紅茶が好きなら、ミルクティーも好きでしょ?」と言われるたびに、
心の中では何度も「そうじゃないんだ」と思ってきました。

忘れられない記憶があります。
大学時代、学食に食べに行く同級生の男の子に「戻ってくるとき紅茶買ってきて」とお願いしたら、
差し出されたのは、甘いミルクティーのペットボトルでした。
【女の子はミルクティー好き】という思い込みからの優しさだったと思います。

でも私は、それをどうしても飲めませんでした。
相手に悪いなという気持ちと、自分の感覚が人と違うことへの戸惑い。
その小さなズレの記憶は、今でも私の中に残っています。

そんな私が「チャイ」を飲んだのは、1999年か2000年。奈良にあったナンカレー屋さんでした。
今となっては、どうしてあのときチャイを口にしたのかははっきりとは覚えていません。
私が頼んだのか、隣にいた夫のを一口味見したのか。
すでにハーブのお店を始めていた時期だったので、勉強のつもりだったのかもしれません。
あるいは、カレーがとても美味しいお店だったから、チャイにも期待したのかもしれません。

けれどそのときの一杯は、本当に美味しかった。

それから私は、いろいろなお店でチャイを試すようになります。
チャイが好きな夫が頼んだものを、ひとくち分けてもらって。
でも、やっぱり飲めないことの方が多かった。

「これはちょっと無理…」
「あのお店のは美味しかったのにな」
何度もそんなふうに思いました。

そのうちに、ある大きな気づきが訪れます。
最初に美味しいと思ったあの一杯は、「チャイ」ではなく、「マサラチャイ」だったのだと。

当時は、今のようにネットで情報を調べたり、SNSでレビューを読んだりできる時代ではありませんでした。
お店のメニューに「チャイ」と書いてあっても、それがどんなチャイなのか、飲んでみるまで分からなかった。
「チャイ」には複数のスパイスが入っているものだと思っていた私は、
ノーマルなチャイを飲んでがっかりする経験を、何度も繰り返すことになりました。

けれど、ようやく知るのです。
私が飲めるチャイは、“マサラチャイ”だったのだと。

いま私は、「魅惑のマサラチャイ」という商品を作っています。

「マサラチャイ」インドでは日常的に飲まれています。濃厚なスパイスの香りを楽しむティーです。
スパイスを自分で選び、砕き、アッサム茶葉と合わせ、乳製品が苦手な自分の舌で確かめながら調整しました。

かつての自分が“飲めなかった”という体験が、
“誰かが飲めるようになる一杯”を生み出す原点になったのです。

しかもそのチャイが、チャイ好きの人たちからも「おいしい」と喜ばれている。
それは、何よりもうれしくて、何より深い確信になっています。

「名前って、本当に大事」ということです。

「チャイ」と「マサラチャイ」は、どちらもインド・ネパールの豊かな文化に根ざした大切なお茶です。
私はその文化を深く尊敬し、学び続けたいと思っています。
そのうえで、日本において「チャイ=甘いミルクティー」という印象が強く広まっている現実があることも事実です。

だからこそ、「紅茶」「チャイ」「マサラチャイ」という名前を、きちんと伝えていきたいのです。
紅茶を頼んでチャイが出てきたら、私は飲めません。
でも、マサラチャイなら飲める。
そんな人が、この世界には、私以外にもきっといます。

「魅惑のマサラチャイ」は、私の真剣さと時間、そして祈りが詰まった一杯だということ、
誰よりも“チャイを飲めなかった人”が、
自分の感覚と、文化と、味覚と、誠実に向き合って、
「これなら飲める」「これが飲みたい」と思えるマサラチャイをつくり上げた。

それは、ただの「ブレンドの工夫」ではありません。
体験の証明であり、文化への敬意であり、やさしさの結晶です。

このお茶が持つ“生まれた理由”と“届けたい思い”を、誰よりも丁寧に言葉にしたいと思っています。

以上、ミルクティーが苦手だった私が、マサラチャイを届ける理由でした。